take me out
happy (ぺージ2/12)

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秋草の匂いを感じる庭を横目に、俺は自宅の縁側で、棋盤相手に一人座り込んでいた。
左膝を立て、その上に同側の腕を置く。
手には本が握られ、盤上の棋譜と同じものが印刷されたページを開いている。
その姿勢で、俺は盤上の駒をジッと見つめ、あることに思いを馳せていた。

どーゆうことだよ、オイ……。

俺は心の中で苦々しげに呟くと、眼下の将棋とは全く関係のないそのあることに眉間のしわを深めた。

どーして来ねぇーんだよ、名無子は?
今日は俺の誕生日だぞ?

俺はあってしかるべき名無子の姿がそばにないことにひどくイラついていた。
別に約束なんてしたわけじゃねぇーけど、彼氏の誕生日くらいアイツだって無理してでも休みを取ってくんだろーって、俺は単純に期待していたんだ。
いつも追いたてられてる任務から、この日だけは解放されて、二人一緒に過ごすんだろうって、そう期待していた。
なのに。

アイツ、来ねぇー。

俺は開いていた本を閉じ、棋盤の横に無造作に置く。
立てていた片膝を抱え込んで、

何してんだ、アイツ?
今日も任務に行ってんのかよ?

答えの得られぬ自問を胸に投げ、でも、それって、と、すかさず一つの可能性を打ち返す。

俺の誕生日、忘れてるってことだろ。
いや、それ以前に、今日が俺の誕生日だって、アイツ、わかってねぇーかもしんねぇ。

その考えに、あり得る、と思った。



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