take me out
Girl's side-25 (ぺージ1/3)
ずっと一人ぼっちだったこの部屋に、シカマルさんがいる。
空を雲が穏やかに流れていくような、シカマルさん独特のゆったりとした時の流れ方がこの部屋を支配して、私は言いようもなく幸せになる。
シカマルさんの気だるげな話し方も、フッと黙り込む横顔も、伏し目がちにお茶を飲むしぐさも、そのどれもが私には心地良くて、心惹かれて、私は時間が過ぎるのも忘れた。
どのくらい一緒にいたんだろう。
「そんじゃ俺、帰るわ」
立ち上がったシカマルさんに、あぁ、やっぱり帰ってしまうんだなぁって、私の胸がきゅぅっと悲鳴をあげた。
「疲れてっとこ、長居して悪かったな」
そう言って玄関に向かったシカマルさんを、
全然悪くなんかない……。
そんなふうに思いながら、私は急いで追いかけた。
玄関のドアがパタンと閉まって、シカマルさんの姿はドアの向こうに飲み込まれる。
私なんかじゃ引き止められるような気の利いたセリフは言えなくて、おとなしく見送っただけだった。
シカマルさんと私を隔てるドアを見つめながら、
言いたかったことが、たくさんある気がするのに……。
って思う。
言いたかったこと……。
そのことに思いを巡らせた時、
『感謝の気持ちは伝えないとね』
私の中にカカシ先生の声が浮かんだ。
そっか、お礼を――。
私は右胸のポケットに手を当てて、ちょっと考える。
でもすぐにその手をはずし、私は部屋に戻った。
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