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Girl's side-21 (ぺージ3/4)

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そう、そうだ。
ありがとうって言わなきゃ。

「あの……シカマルさん」

すでに私に背を向けて火影邸へ去りかけるシカマルさんに、私は勇気を振りしぼって声をかけた。

言わなきゃ、この一言だけは――。

聞こえないのか、聞こえてるのか、振り向かないシカマルさんの背中を凝視して、

「あ……ぁ……」

どもってしまう自分を叱咤して、

「あ、ありが…とぅ……」

伝えたいと思う気持ちとはえらい反比例したか細い声だったけれど、小さいながらも私は言えた。
ありがとうって。
シカマルさんに、自分の感謝の気持ちを伝えられた。
小さい小さい声でも、空気をちゃんと震わせられた。

でも、こんなんじゃ聞こえなかったかも……。

そう気にかける私をよそに、シカマルさんはピタッと足を止めると、フッと振り返った。
ちょっとだけ驚いた顔して、私のことをじっと見つめてくる。

私、変なこと言いました?
な…なんか言ってください……。

無言のシカマルさんに見据えられたまま、私の胸は不安と、この期に及んでまでトキめく不謹慎なドキドキとに苛まれる。

シカマルさん……。
ねぇ、なんか言ってください――。

このままだとますます動揺しそうな自分に、私は思いきって終止符を打った。

「じゃぁ、帰ります」

ボソッと呟くと、私は意味もなくあわてながら踵を返した。
どっかぎこちない感じで足を踏み出す私にシカマルさんの声が届く。



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