take me out
Girl's side-12 (ぺージ3/4)
「……んで…なんで言わねぇんだよ?」
ひどく苦しそうなその声に、私はハッとした。
なんで、そんなにつらそうに――。
私の視線の先で、真剣な眼をした奈良さんが言葉を続ける。
「俺、そんなこと全然知らねぇーから、余計なことたくさん言って、お前のことたくさん傷つけちまったじゃねぇか。それなのに、どうして何も言わねぇんだよ? つらいとか、悲しいとか、苦しいとか、どうして俺に教えてくれねぇんだよ?」
私は……。
奈良さんの痛々しい表情に私は胸が詰まって、奈良さんの言ってることも私の言うべき言葉もわからないまま、何も言えずにただただ奈良さんを見つめていた。
それしか出来ないでいる私に、奈良さんはもどかしげに、苛立たしげに、さらに言葉を絞り出した。
「もっと……! もっと俺にお前を見せろよ! ほんとのお前を俺には見せろよ! 何考えてんのか、何思ってんのか、何が嬉しいのか、何がムカつくのか、何もかも俺には言えよ! 全部全部、俺に吐き出せばいーじゃねぇか!」
人気のない夜の住宅地で、自分の血液の血管を流れ行く音がひどく頭に響いた。
そんな状態で、何を言ったらいいのか見つからなくて、でも、一番適切だと思える言葉を必死に選んでつむぎ出す。
「…ごめん、なさい……」
動揺を押し殺した、変に冷静な私の声が空気を震わせる。
「違っ……!! そんな言葉……!」
一瞬凍りついた奈良さんがすぐに反論して、私の頭は真っ白になった。
謝るんじゃなくて、何を言えば……?
視界から、私の存在を完全に押し出した奈良さんが、諦めたように投げやりに低い声で呟く。
「もう……いい。わかった……」
そのまま私に背を向けて、奈良さんは歩き出した。
決して私の方を振り向こうとはせず。
二度と私は奈良さんの視界に入れてもらえないんだと思わされる。
暗い闇の中に溶け込んで、奈良さんが私の前から姿を消した。
(ページ3/4)-76-
←|→ backselect page/254