take me out
Girl's side-12 (ぺージ2/4)
目の前に私の住むアパートが見えて、私は指をさした。
「うち、アレです」
その小ささに、ちょっと納得しかねる様子で奈良さんがたずねてくる。
「名無し、お前、家族何人で暮らしてんの?」
「一人」
「なんだよ、一人暮らしかよ。んじゃ、両親とか兄弟なんかは違うとこに住んでんのか」
私は予想通りの話の展開に心がぎゅうっと締め付けられた。
でも誤魔化せないから。
誤魔化したくもない。
私は奈良さんの眼をちゃんと見て、言葉を伝える。
「家族はみんな亡くなりました」
どっか遠くで聞こえるようなその言葉に、私の体内の血液が重力で一気に足元に集まってしまったようなフラつきをおぼえる。
あぁ、そうだ。
みんな、もういない……。
もう、そのことを認めなきゃいけない。
「母は小さい頃に病気で。父と兄は一年前に任務で相次いで命を落としました。だから家族はもういません」
もういない。
そう、もういないんです。
私はどんな顔をしていいんだかわからないまま、奈良さんを静かに見上げていた。
その流れる沈黙を破ったのは奈良さんだった。
でも――。
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