take me out
Girl's side-08 (ぺージ2/4)
奈良家の縁側で、将棋に向かう奈良さんを隣にして、私は晴れた空を仰ぎながら、父上や兄者の思い出と共に小さくてやわらかな光の虹を思い浮かべていた。
ふっと奈良さんの存在が気になって、私はそちらへと目を移した。
奈良さんはジッと将棋盤を見つめている。
でも、さっきから何も動かしてない。
そんなに難しい勝負なわけ?
私は奈良さんの目の前の将棋盤を覗き込んだ。
その駒並びを見て思う。
コレ、何も悩む事なんてないけど。
パチッと。
私は手を伸ばして盤上の駒を一つ動かした。
「王手」
これで白黒つくじゃない。
私がそう思っていると、奈良さんが見下し顔で文句を言った。
「バーカ。その王手を回避する策を考えてんじゃねぇーか。なのに、そこで王手指してどうすんだよ、お前」
「なんだ」
そういうことか。
奈良さんが私の動かした駒を元へ戻す。
その姿を私が大人しく眺めていると
「っつぅか、お前、将棋できんの? だったら、ちょっと俺の相手しろよ」
奈良さんが私に視線を寄こした。
「いいですけど」
「よし、負けた方は罰ゲームな」
はい?
何言ってんの?
負けるのなんか私に決まってるじゃない。
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