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Girl's side-05 (ぺージ2/3)

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雨なんてキライ。
最悪な日はいつだって雨だから。
そう、あの日だって雨だった。
兄者が死んだと知らされた日……。

ドクンッと私の心臓が音をたて、色のない記憶が無意味に頭を駆けめぐる。
降り止まない霧雨の中、兄者の死を知って泣き叫ぶ私を父上が強く抱きしめた。
見たことないほど無表情で痛々しい顔の父上。
いつまでも泣き続けた自分自身。
父上と二人、すごく苦しかった。
すごく、すごく。
でもあの時はまだ父上がいてくれた。
私と一緒に優しい父上が。
止まらない自分の記憶に、私の血液がドクドクと音を立てて流れていく。
見たくもない映像が私の脳裏を刺すように浮かび上がる。
でも、そんな父上も兄者の後を追うように任務に出かけて行ってしまった。
不安で不安で仕方なかった自分。
そして突然届いた文に突きつけられた父上の殉職。
忘れもしない、それも土砂降りの雨の日だった。

私は本当に何もかも無くしてしまった――。

体にあたる雨が激しさを増した。
自分の脈が速くなって、胸がどんどん苦しくなっていく。
雨が降った日に私を貫いたかけがえのない二人の死が頭の中を締め付ける。
降りしきる雨に私の大切なものを全て奪われていくような、そんな錯覚に襲われて。
私は突如叫びたい衝動に駆られた。

狂いそうだ――。

この雨から逃げたくて。
ただ、ただ、頭の中が真っ白になって。
何かに追い立てられるかのように、追い込まれるかのように、わけもわからず私は走り出していた。





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