take me out
Boy's side-34 (ぺージ3/3)
「すごい……」
名無子が息を飲んで呟く。
そして、ゆっくり俺を振り向いて、
「キレイ!」
そう言って、虹を指した。
名無子が。
笑いながら。
俺を見て。
笑いながら。
嬉しそうに虹を指した。
その顔に、今度は俺が息を飲む。
……笑った。
初めてお前が、笑った――。
「……おまぇ…」
声にならない声を吐きだすと、俺は弾かれたように手を伸ばした。
目の前で笑う名無子の腰に手をまわし、空に向かって抱き上げる。
「名無子!」
まるで子供に高い高いをするように。
真っ白な頭で、それでも体ん中はひどくいっぱいいっぱいに満たされてて、何度もアイツの名前を呼びながら、俺は水たまりをバシャバシャはねあげて、嬉しくて嬉しくてバカみたいにぐるぐるまわった。
「シ…シカマルさん? シカマル……さん?!」
抱きあげられて何が何だかわからない名無子は、必死に俺の肩につかまって俺の名を呼ぶ。
俺はそんな名無子にまったくお構いなしに、
「名無子! 笑った! お前、笑ったーーー!!」
そう叫んで足を止め、俺は名無子の腰をそのまま強く抱きしめた。
名無子が驚いて俺の肩をさらにぎゅっとつかむ。
そして、戸惑うようにどもるように名無子がオズオズ口を開いた。
「……お、重くない? シカマルさん?」
「重くねぇーよ、ぜんぜん」
それっきり、二人でしばらく黙りこむ。
時間が経てば経つほど頭ん中は落ち着いてくるくせに、心臓の音が煩くて。
でもそれが果して俺のものなのか、抱きしめてる名無子のものなのか、ひどく曖昧で、俺は冷静にその音を受け止めていた。
ドクン、ドクン、とそのリズムを計るように、俺は静かに声を発した。
「なぁ、名無子。お前、俺と付き合え」
to be continued.
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