take me out
Boy's side-34 (ぺージ2/3)
……アイツ、遅ぇなぁーーー。
俺は今、野ッ原の真ん中で待ちぼうけ中。
なぜなら。
定食屋へ続く道の途中で、名無子が突然叫んだ。
「あ」
「あ?」
「忘れ物した」
「忘れ物?」
名無子が真剣な目で俺を見上げた。
「取ってくるんで。あー、すぐ戻りますから。そこで待っててください。すいません」
そう言い捨てると、名無子は家へと一目散に戻っていった。
ったく、めんどくせぇなぁーーー。
残された俺は名無子が指さしていった野ッ原で、こうして仕方なく待っている。
空は青い部分がだいぶ広がって灰色の雲が追いやられていた。
夕刻とはいえ、まだ空が赤く染まるほどではなく、野原にできた水たまりには青空と流れる雲が映し出された。
一緒に戻ったほうが良かったんじゃねぇーの?
なんて思いながら、水たまりをパシャッと蹴っていると、
「すいませーん。お待たせです」
って叫ぶ黒い点が近付いてきた。
「おっせぇーよ、お前。めんどく……おっ」
俺は名無子を見て文句をつけつつ、最後に感嘆の声を洩らした。
名無子が謝りながら、何? って顔で俺の前まで来る。
俺は名無子の後ろを人差し指でトントンと示した。
「うしろ。見てみろよ」
「――?」
言われたとおり、名無子が後ろを振り返る。
「――ッ」
どうやら名無子の目にも映ったらしい。
空にかかる半円の筋。
雨上がりの空にはいつか見たように大きな虹が架かっていた。
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