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Boy's side-29 (ぺージ3/3)

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「……あの」

遠慮がちにかけられた声に目をあげる。
その声の響きに、俺を見つめる瞳の色に、俺はコイツが何を言おうとしてるのか、瞬時に悟る。
申し訳なさそうに揺れる名無子の瞳を俺は真っすぐ見つめ返した。

「謝ったりしたら、許さねぇーからな」
「シカマルさん……」

戸惑うような名無子の表情に、図星だ、と思う。
コイツは約束を守れなかったことを謝ろうとしてる。

そんなの大したことじゃねぇーのに。
全然構やしねぇーのに。

俺は名無子に説き聞かせるように口を開いた。

「待っててやるから。だーから。早く良くなれよ。一緒に食いに行くんだろ? サバミソ定食」
「…うん」
「なら、約束破ったうちに入んねぇーよ。謝んな。行くのが予定より遅くなっただけだろ。ちょっとだけな。…いや、ちょっとじゃねぇーか。かなり? 相当?」
「うん……相当」
「だな」

俺がニヤッと笑いを漏らしていると、

「ありがとう。シカマルさん」

コイツ独特の澄んだ眼で告げられた。

……油断した。

お前の言葉がスルッと俺の胸に入って、体の中心からほわっとあっためられる。

不意打ちすぎだろ、それ。

礼言うなんて思ってなくて、嬉しさに鼓動が速まる。
俺は跳ねる胸の動揺を抑えて抑えて、精一杯の強がりで、

「ばーか。礼なんか言ってる場合じゃねぇーだろ。んなことより、早くケガ治せ」

そう言うと、ベッドから立ち上がり、

「そろそろ見回りの人間が来る頃だな。帰るとすっか。んじゃあな」

部屋のドアに近づいた。

「うん」

返された名無子の声が不安げな響きを帯びてる気がして、思わず振り返る。
俺の視界に、心細そうな顔をした名無子が映った。
俺は無愛想に背中を向けると、ボソッと呟いた。

「心配すんな。毎日、来てやるから」

俺は汗ばむ手を急いでドアに伸ばした。





to be continued.
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