take me out
Boy's side-23 (ぺージ4/4)

 bookmark?


いなくなるって…なんの話だよ?

うまく言葉が出てこなくて、俺は息を飲み、名無子を見つめているのが精一杯だった。

「兄者が……兄者が私にくれて…こんぺいとう……私が好きだから…。……でも、その後、任務に出て……帰ってきてくれなかった――」

兄者……コイツの兄弟…ソイツが死ぬ前にコイツにこんぺいとうを……。

言葉の断片をつなぎ合わせて浮かび上がった情景に飲み込まれそうになったとき、名無子が俺を現実に引き戻した。
肩を震わせ俺のベストを掴む手に一段と力を入れ、名無子が必死に俺を見上げた。

「私、いや…シカマルさんを失うのはイヤ……。シカマルさんまで失いたくないよ――」

ぽろりと。
名無子の茶色い瞳から涙がこぼれた。
ぽろぽろ、ぽろぽろと、次から次へと涙が溢れ出て、その頬を伝っていく。
目の前で泣いている名無子に動揺して、でも壊れてしまいそうなその表情をどうにかしてやりたくて、俺は夢中で名無子の腕を掴み、体ごと引き寄せた。
一生懸命抱きしめて。

「ばぁか。いなくなんねぇよ。いなくなるわけねぇだろーが。だから、安心しろ」

抱きしめる腕に力を込めて、その震える体を包み込んだ。

「安心しろよ。安心して、思いっきり泣いとけ。俺の前で好きなだけ泣いていーから。一人になんか絶対ェしねぇから」

混乱する頭の中で、いろんな言葉が、映像がぐるぐる回る。
それでも俺は、あぁ、そうかって思った。

やっと、わかった。
コイツはずっと怖かったんだ。
自分を理解してくれる奴が、自分にとって大事な奴が、突然いなくなってしまうってことが。
大好きな両親や兄貴を失って、その痛みを死ぬほど知ってっから。
そんな思い、もう二度としねぇように、最初っから大事な人などつくらぬように、コイツは人に感情見せねぇことで誰もそばに近づけなかったんだ。

けど、コイツは俺の前で泣いてくれた。
あの雨の日みたいな曖昧なものじゃなくて、コイツが自分から俺に涙を見せた。
誰にも見せなかった心の痛みを、俺の前で見せてくれたんだ。





to be continued.
(ページ4/4)
-138-
|
 back
select page/254

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -