take me out
Boy's side-23 (ぺージ1/4)
名無子の部屋に足を踏み入れた俺は柔らかな香りに包まれた。
たいして広くはないものの、綺麗に片づいている。
フローリングに白い壁紙。
木材ベースのテーブルやベッドがあり、カーテンやクッションなんかの布物は淡いオレンジやピンクの暖色系で統一されていた。
「はい、どうぞ」
名無子がテーブルの前にクッションを用意してくれた。
「どーも」
俺はストンとその上に座る。
「今、お茶淹れますから」
そう言うと名無子はキッチンに立った。
「あぁ」
その後ろ姿を見送って、俺は見慣れない部屋の中を眺める。
後ろのベッドに目をやると、枕元にうさぎの型に切り抜いたタオル地を二枚縫い合わせて作った薄ピンクのぬいぐるみが置いてあった。
点々の目に、数字の3を右に90度回転させてくっつけたような口。
ずいぶんとマヌケな面したぬいぐるみだな。
こんなのと一緒に寝てんのか。
目の前に広がる名無子の生活が、こんなにも普通に女の子らしいものだと想像していなかった俺はひどくドキドキした。
速まる心拍を感じて、慌ててベッドからキッチンの名無子に目を移す。
いつもの黒つなぎ姿を見て少しばかり落ち着きを取り戻した俺は、名無子が任務帰りなのを思い出した。
「よぉ、任務はどーだった?」
「別に。いつも通りですけど」
「カカシと一緒に行ってきたのか?」
あくまで普通に、でも、一番聞きたかったのはそのことで。
「そーですけど」
わかってはいるけど、その返事に俺はかすかなショックを受ける。
まるでガキみたいな嫉妬心だ。
……そんじゃさぁ。
俺はさらに食い下がる。
「カカシってどーよ? 何か話したりすんのか?」
「うーん、あんまり」
今度は満足いくその返事に、
「ふぅーん」
俺はわきあがる喜びを胸内に押さえつけた。
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