take me out
Boy's side-12 (ぺージ2/4)
何を話すわけでもなく、その沈黙が居心地悪いわけでもない。
それがすごく不思議だと思う。
名無しも俺と同じように思ってんのかな。
いつも名無しの表情からは何も読みとれない。
感情を口にするようなこともしない。
だから俺は、お前の――。
「奈良さん」
名無しから不意に声をかけられる。
「あ?」
「もうすぐ家なんで、このへんでいいです」
「いいよ、家の前まで行ってやっから」
「でも」
「でもじゃねぇよ。俺のせいで遅くなったんだ。お前が親に怒られそうになったら、俺が弁明してやるから」
「……絶対怒られることないんで」
「わっかんねぇだろ、そんなの。ウダウダゆってねぇで行くぞ、ほら」
俺はさらに歩を進めた。
2〜3分歩くと、また名無しが口を開いた。
「うち、アレです」
指さしたのは、目の前のアパート。
でも、どう見たってそんなに大きくなくて。
一人暮らし用?
「名無し、お前、家族何人で暮らしてんの?」
「一人」
「なんだよ、一人暮らしかよ」
だったら、教えろっつーの。
「んじゃ、両親とか兄弟なんかは違うとこに住んでんのか」
その言葉に名無しがまっすぐ俺を見た。
妙にキレイな眼でまっすぐと。
え……その眼。
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