雑記・SS | ナノ



・書きたいところだけ
・脈絡なし
・任務から戻った夢主が風柱邸に帰ってきた時に不死川さんが居なかった設定。


屋敷主の居ない邸内で、吊るされた羽織を取ってぎゅうと抱きしめ横になる。顔を埋めるようにすると、まるで持ち主の体を抱いているかのように彼の香りが強く広がった。それはもう思わず笑ってしまう程に。
段々とまどろんでいく意識に目を閉じる。不死川さん、この状況見たらなんて言うかな。仏頂面で返せって言うかな。
座布団を枕代わりに縁側から庭に体を向けて、柔い日差しの中でうとうとと意識が午睡に沈んでいく。その時、庭先から砂利の鳴る音がしてああ、と少しだけ意識を浮上させた。
あの歩き方、間違いなくこの羽織の持ち主であるけれど、一度閉じてしまった目はそう簡単に開いてくれない。いやいや、そもそも休暇をもらって一度帰って来ているのだから、寝ていて咎められる事はない筈。
砂利を踏む音が目の前で止まり、周りが静かになった事で再び深く沈む意識。何か月かぶりに帰って来たというのに、再会がこれでいいのかとも思うけれど多分彼なら許してくれる。
ぎし、と床の軋む音が小さく響くと彼の細い髪が頬を撫でる感触がした。そしてゆっくり離れて行って、誘われるように私の瞼は開いていく。そろそろと視線を上げると、日を遮るように縁側に腰掛けた不死川さんが私を見下ろしていた。その様相はいつもと違い、羽織を脱いで黒い隊服を身に纏った簡素なものだった。二三度まばたきをすると自然と頬が緩む。

「…おはようございます」
「いい、寝てろ」

完全に寝ぼけ声な私の頭をくしゃりと撫でる大きな手に、起こしかけた体を完全に脱力させる。

「…お言葉に甘えて」

最後の力を振り絞ってそういうと小さく彼の笑った声が聞えた。彼がそこから動く気配はない。私の意識が深く落ちていく程に、羽織を握っていた手が段々と緩み開いていく。夢か現実かわからなくなった頃にその手が彼の大きな手に握られたような気がした。

「おかえり」

もう夢の中に落ちていた私にも、どうしてかその低い声だけは彼のものだとはっきりわかったのだった。





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