鬼滅の刃短編小説 | ナノ



あの男が気に入らない。

博愛主義とでも言うのだろうか。誰に対してもヘラヘラ眉毛を下げたりして。鬼を斬り、奴らの瓦解していく身体を抱きしめているのを見た。今しがた己が殺されそうになっていたくせに、何をしているんだ。それに黒刀。出世できない。水の呼吸を使うらしいが、使いこなせていないじゃないか。私でも解る程中途半端に研鑚されたその伎倆。それでもヘラヘラ笑ったりして。男のくせに優しい。その箱は何だ。そんなに大きな荷物を背負って戦場に出てくるなんて邪魔以外の何物でもない。足手まとい、重荷、目の上のたんこぶ。で、その隣にいる猪は何だ。隊服も着ないで、己の身を顧みない奴は大嫌いだよ。馬鹿、阿保、愚か者。何より猪なんて嫌いだ。頭から皮を被るなんて意味が分からない。ぼたん鍋なんて大っ嫌いだよ。嗚呼また、あいつ、栗花落カナヲと笑ってる。嬉しそうに、幸せそうに。微笑ましく銅貨を投げている。剣士だろうがなんだろうが男と女さえ居ればただの雌雄、動物。たかが知れてる。雄と雌、生殖する生き物。慇懃。嫌い嫌い。
あんなの相手にしていたらいけない。私は剣士、鬼殺隊。強い、強い、私は強い。今日も私は鬼を斬る。鬼殺の剣士、ただそれだけ。何者でもない、何者にもならない。私は今日も鬼を斬る。鬼殺の剣士として。



「なあ炭治郎、あの子いつもお前のこと睨んでるけど知り合い?」
「ああ。前に蝶屋敷で会った事あるよ。甘露寺さんみたいな匂いがするからよく覚えてるんだ」


Title:凍土様





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