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おまけ【第一印象】

初めて会ったときを思い出す。公園でいつも通り猫に餌をやっていた時話しかけられた。こんな奴に誰が話しかける、と思ったらその第一声は「おそ松くん、」だった。そりゃそうか。しゃがみこんだまま振り返って、初めて「息を呑む」ということを無意識にした。

「おそ松くんもこういうことするんだね」

隣にしゃがみこんだ女は、何ていうかうまく表現出来ないけど「透明みたいな女」だと思った。女になんて、というか他人に興味なんてもつこと無かった自分が初めて「綺麗」だと思った。猫に微笑む横顔は儚そうで切なくて。きっとこんな女と近くにいることも、話すこともこれが最初で最後だろう。
ていうかこんなレベルの高い女とあの糞兄貴どうやって知り合ったんだよ。
女と対して会話もしたこともない俺を含め童貞兄弟は、きっと可愛い女と関わり合うことなんてこの先ない。そう、思ってたんだよなぁ。


「ねえ、何考えてんの?」

「ん、あー…初めて会ったときのこと」

「えっ…ねえ、わたしの第一印象、どんなだった?」

少し不安げに聞いてくるるりに、少しだけ加虐心が擽られる。そんなにまん丸とした瞳を揺らして。笑いそうになるのを我慢してわざと無愛想に答えてやる。

「あー…不細工だし変な女だなー…と…」

「…………」

意地悪してやろうと思ってたのに、コイツときたらほんとに悲しそうな顔をするもんだから。

「あー、あの、いや……は、初めて会ったときから……綺麗だと思って、た…」

俺はいつからこんな女に弱い生き物になったんだろう。いや、それは女じゃなくて「るりだから」なんだろうな。あー情ねえ。るりの顔はもう真っ赤になって湯気がたちそうなんじゃないかってくらいだけど、きっと俺も同じくらい真っ赤なんだろう。


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