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これは、もう駄目だってことなのかもしれない。三時間、四時間待っても一松は来ない。そう思ってもまだ帰れずにいた。雨は土砂降りから小雨に変わったけど、身体はすっかり冷えて手足は冷たい。
手をすり合わせながら、この公園で出会ったことを思い出す。最初はおそ松くんだと思って声をかけた。猫に餌をやっている彼を見て単純かもしれないけど「この人は優しい人なんだな」と心から思った。不器用で、言葉足らずで、感情表現が下手で、寂しがり屋の癖に意地っ張り。いつからだろう、そんな彼が大切な存在になったのは。いつからだろう、彼といるのが心地好く感じたのは。私達は似た者同士なのかもしれない。本当は寂しいのに、ひとりでいることに慣れてしまっていた。素直に言葉にすることが出来なくて、逃げてばかり。
あのね、一松。一松が来たら言うつもりなの。「好きです」って。

ぬかるんだ地面に足音が聞こえて振り向くと、走ってきたのか額に汗をかいた一松が近付いてきていた。膝のあたりまで雨が飛び散ってびしょびしょに濡れている。

来てくれた、それだけでじわりと泣きそうになった。私、こんなに泣き虫だったっけ。


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