誰でも良かったんだ。誰でも良くなったんだ。もしかしたら、なんて。きっと性欲発散する為の…そういう事ができる相手なら。安いお金で出来る相手なら。一松を置いて店に戻った後、更衣室に入った途端に我慢していた感情がぽろぽろと頬を伝う液体となって溢れ出してきた。ロッカーにもたれるように、ずるずると床に座り込んでただただ涙が流れていく。ここで薄々感じていたものが漸く分かった。私…、私は、一松に恋をしていたんだと。
「るりさん」
仕事を終えた後、今日一松の担当だった後輩に帰り際呼び止められ足を止めた。何だか複雑な気持ちになって真っ直ぐに彼女を見ることが出来ない。
「あの…今日のお客さんなんですけど、るりさんのお知り合いの方ですよね」
「えっ、まあ…うん」
「あの人、今日るりさんに会いに来たみたいですよ」
「えっ」
「それで、るりさん他の方担当してますって言ったら帰ろうとしてて…私、引き止めてあのお客さんにサービス始めたんです。けど…シ始めても何の反応もなくて、やっぱりるりじゃないと駄目だって今日は帰られたんですよ」
そんな、今日は私に会いに来たんだ…。お店になんか今まで来たことないのに。
「私じゃないと駄目」だと言ってくれたことが凄く嬉しかった。それなのに私…一松に酷いこと…。
「そっか、教えてくれてありがとね」
帰り道、一松の顔を思い出していた。悲しい顔をしてたな。…一松に会いたい。会って謝りたい。