「はーっ、あー…」
一松が精液を私の咥内へ出したあと、いつもとは違った様子で項垂れた。どうしたの、と聴くと彼はいつもより更に目付きを鋭くさせた。ぎらぎらとした瞳が私を見つめる。まるで、狼みたいだ。女の勘とでも言うのだろうか、一松が今何を思っていてどうしたいのか伝わった気がした。
「一松、セックス…したい?」
一松は鼻をピクッとさせてから、視線を外した。その仕草に私は確信を得て、そっと躊躇気味に一松を抱き締めた。
「…いいよ、一松なら」
私達は何度もベッドで裸になり相手を気持ちよくしたりしてもらったりと行為を繰り返してきたけど、セックスはしたことがなかった。そこには暗黙の壁があって、それをお互い壊す事はなかった。それは「本番はナシ」という私の仕事が大きく関係していたのかもしれないという事と、セックスをしてしまったら「何かが変わってしまうのかもしれない」とお互いどこかで感じていたのかもしれない…という事だ。
けど今夜、それが打ち破られようとしていた。一松と私の距離はもう数cmしかなくて、吸い寄せられるようにしてキスをした。
「んっ、フェラしたあとなのに…いいの?」
「はっ…、いい。今、おまえとキスしたい」
あ、胸がきゅんってした。一松が真っ直ぐに見つめて私の視線を離してくれない。
「るりと、セックスがしたい」