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ここ最近、恐らくギャンブルで負け続けているのだろう。おそ松くんはまた暫くお店に来なかった。私が弟と会ったこと知っているのかな。何となくだけど、一松さんはそういうこと言わなそうだな。

今日も仕事の為事務室で休憩していると、携帯から着信音が鳴った。画面を見てみると知らない番号からだった。

「はい」

「………」

「もしもし?」

「…あー…えっと、もしもし」

電話の声は聞き覚えのあるものだった。そう、それは。

「一松さん?」

「あ、うん」

彼に名刺を渡してから初めての電話だった。初めて彼と電話をしたけど、一松さんは電話が苦手らしい。何となく人とコミュニケーションとるのが苦手な感じは初めて会った時から感じていたけど。だから電話番号を渡したものの実際連絡は今まで来なかったし、きっとかかってくることはないだろうなと思っていたので意外だった。
少し言いにくそうな雰囲気を受話器から感じ取り、私から言葉を発した。

「今日ですか?」

「あ…うん」

無意識なんだろうけど先程と同じ言葉にくすりと笑ってしまう。

「ごめんなさい、今日仕事なんです…明日なら休みなんですけど」

「じゃあ明日…大丈夫なら」

「はい、じゃあ私から連絡しますね」

「うん」

電話を切ったその後で、店長から指名の声がかかった。こうして急遽、明日は一松さんと会うことになった。


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テーマ「人外ファンタジー」
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