09


「…気持ち良かったですか?」

「うん、流石慣れてるだけあるね」

正直、あんなに早く果てたのは始めてだった。と言っても童貞だから、自慰でしかないんだけど。それでもあんなに快感を感じたのは初めてだった。それは、初めてのこういう経験での興奮も快感としての材料となったのかもしれない。
兄弟で「風俗行かねーの?」みたいな話になった時はおそ松兄さんクソ松トド松は行っているような話をしていた。多分行ったことがないのはチョロ松兄さんと俺と十四松。そんなのに金払うなんてさ、と馬鹿にしていた俺は何処へ行ったのやら。
他人に興味を持ったこともないし、他人だって俺なんか興味を持たない。それなのにどうしてかこの女には…。

「一松さん、続きはどうしますか?」

ベッドに腰掛けたままぼーっと考えていたらふと名前を呼ばれた。返事をしようとした時、彼女の鞄から携帯の着信音が鳴り響く。あ、ごめんなさいと一言入れてから電話に出る。

「はい、えっ今日ですか?……そうなんですか…分かりました、大丈夫です」

ピッと電話を切ると、申し訳なさそうにこちらに向き直り再び名前を呼んだ。

「すみません、体調崩しちゃった子がいるらしくて急遽仕事に行かなくちゃならなくて、」

「あぁ、そう」

「あ、これ良かったら」

鞄からゴソゴソと紙を一枚取り出すとボールペンで裏に何やらすらすらと書いて俺に差し出した。彼女の名刺だった。店の名前と場所と彼女の名前が入ったもの。裏を見てみると、電話番号が書いてあった。

「それじゃ」

ふわりと微笑んでホテルのドアから出て行った。


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