08
バイトが終わって、帰路につく。今日はお店の皆に迷惑かけずに済んで良かった。うまく笑えたかどうかはわからないけど…松野くんは相変わらず心配してくれていたから、きっと空元気だってバレていたのかもしれない。

(コンビニに寄ってから帰ろう)
夜の帰り道は街灯も少なく、あまり人も通らない。静かな道を一人歩いていると、ふと手を掴まれ路地裏へと引き込まれた。思わず無意識に声を出そうとした口は大きな手のひらに塞がれた。んー!とこもった声が洩れる。後ろから体の動きを封じられ、逃げたくても逃げられない。恐怖を感じもがいても男の力には到底敵わない。


「暴れんなよ」


耳元で聞き覚えのある声が聞こえた。この声は…!男は口元に当てた手のひらをゆっくり離す。振り向いて思いっきり睨んでやるけど、相手はニヤリと笑うだけ。

「あんた…!」


松野一松だった。
何でここにとか、何のつもりとか、言いたいことはあったけど一松は狭い路地裏の壁にあたしを乱暴に押し付けた。ザラりとして冷たい壁に当たった頬が痛い。どうやって知ったんだか知らないけど、帰り道を待ち伏せしていたんだ。


「離してよ…っ!」


両手を拘束されたまま反抗するけど、一松は後ろからあたしの首元に顔を埋めてすーはー、すーはー、と呼吸を荒くして



「今からヤらせてくんない」


と一言放った。
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