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家に帰った頃にはもう夕陽も沈みかけていて、少し早い宅飲みが始まった。るりとは酒を飲んだことはないけど、こいつ飲めんのか…?兄弟達は女と飲めることが嬉しいのかいつもよりテンションが高く飲むペースが早いように見える。俺は今日はあんまり飲まないことにした。この中の誰かが酔ってるりに変なことしないように見張る為だ。…何で俺彼氏でもないくせに彼氏面してんだろ。

ペースが早かったのもあってまだ日も越えていないのにみんな酔い潰れて寝てしまっていた。起きてるのは俺だけで、数時間までわいわいと騒いでいた部屋が静かになり、聞こえるのは付けっぱなしのテレビの声だけ。隣を見ると気持ち良さそうに寝ているるりの寝顔。長い睫毛とか、柔らかい唇とか、サラサラとした髪とか。こんなに近いのに、何だか遠く感じる。儚い存在のように。指先でるりの髪にふれると、小さく「いち…ま、つ…」と呟いたので驚いて手が止まった。…寝言、か。俺の夢…見てんのかな。ふいに、うーん…とゆっくりるりの瞼があいて、とろんとした瞳が俺を捉えた。

「あ、いちまつだ〜、へへ」

「………」

顔はまだ赤く、るりの酔いは全く冷めていないようだった。へらへらと笑いながら俺の元へと来ると、ぼふっと俺の足元へと飛び込んできた。丁度膝枕になり、るりの腕は俺の腰へとまわされている。

「ちょっ…」

「あー、いちまつのにおいだあ…あたしいちまつのにおい、だいすきなんだぁ」


ぎゅうっと抱きしめるように俺の腹に顔を埋める。こんな状況じゃ、我慢出来なくなる。


「おい、離れろよ…」

「やだっ!いちまつにぎゅうするの!」


頑なに離れないるりに諦めてそのままでいると、再び睡魔が襲ってきたのかうつらうつらとしている。眠りに落ちる一歩手前のまま、「いちまつ、」と小さく俺の名前を呼んだ。


「いちまつは、もうあたしのこと嫌い、なの…?待っていれば…また好きになって、くれる、の…?」


るりの瞳から涙が流れて、俺のジャージに染み込んだ。そのまますーすーと再び眠りについた。
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