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「なんで俺が」

反論したけどトド松は「いいから!」と強制的に俺達を家から追い出した。この気まずさに溜息をつきつつ、仕方なく歩き出した。後ろから俺の後を慌てて追いかけてくるるりの足音がする。俺とは歩幅の違う、小刻みな足音。商店街に向かって歩いていると、斜め後ろを歩くるりが遠慮気味に俺の手に触れた。びくっとして驚いて立ち止まり振り返ると、眉尻を下げたるりが上目遣いで「……だめ、かな」と聞いた。


「…いや、いいけど」

数秒間が空いて答えると、安堵の表情を浮かべる。なんだよ、可愛いことすんなよ。先程のるりの「好き」という言葉を思い出して心臓のリズムが早くなる。俺も好きだって言いたかったけどタイミングを逃して、どうしたらいいか分からない。指先だけ絡めてきたるりは、しっかりと繋ぐように手のひらを絡めてきた。手を繋ぐだけでこんなに緊張するなんてガキかよ、ああでも手汗かいてるし。手を繋いだのはあの日デートをした以来で、あの時もドキドキしたけど今でも変わらず緊張する。いつだって俺の意識はこいつに向けられてるんだ。悔しいくらいに。

兄弟が帰ってきて、あいつが周りの奴らに笑顔を振り撒いたりトド松と話して赤面してるるりを見てイライラしていたのに、今はもう顔がにやけそうになる。

一通り買い物を終えて、帰路につく。会話はないけど先程までの気まずさはなくてどこか少し心地良さを感じていた。もうこのまま家に帰りたくない。るりも同じだろうか。同じだといいな。
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