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夢でも見てるのかな、俺。そう思ってしまう程驚いた、るりの発言。るりが、俺を好きだと言った。ずっと聞きたかったその二文字の言葉。以前「絶対に好きにはならない」とそう言われた。ごくり、と意味もなく生唾を飲み込む。るりへと向けてゆっくりと口を開けた。

「俺は…俺、も…」

躊躇いながらも必死に発したその声は、再び玄関先から聞こえた「ただいまー」という複数の声に呆気なくかき消された。ドタドタと聞こえるその騒々しい足音と声に、その先の言葉が言えなくなった。

「え、なに誰か来てるの?」

「女?女の子?誰?」

るりの後ろから現れたタイミングの悪い兄弟達を思わず睨んでしまう。けど、普段来ない女の来客に釘付けで、俺の視線など気付いていないようだ。

「えっ、トド松のバイト先の子じゃん!」

「あ、ほんとだー!あのかわいい子!えっとー、るりちゃんだっけ!」

「えーなんで?なんでうちにいるのー?!」


周りの兄弟達はやんややんやと物珍しそうにるりを囲む。るりはというと、さっきまでの堂々とした態度とは変わって少し戸惑っているようだった。「あ、えっと…」とか「お邪魔してます…」と控えめにおどおどとしている。

その中にはトド松もいて何も言わなかった。が、何を思ったのか思い付いたかのように笑顔でこの場にいる全員に聞こえるように言った。


「そうだ、折角百瀬さんが遊びに来てくれたんだしさ。みんなで飲もうよ!」


「おっいいねー」

「やったー!」


他の兄弟達が喜んでいる中、俺とるりだけが取り残されたようにただ黙ったままでいた。
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