45
あれ以来るりとは連絡もとっていないし、トド松とも特に話してもいない。あれ以来とは言っても数日しかたっていないんだけど。おそ松兄さんやチョロ松兄さんからは「最近以前にも増してより暗くなったよね」と言われる始末。何にもやる気は起きなくて、猫ともじゃれることもなくただ家に引きこもっている。いいんだよ別に、もうどうだって。恋愛なんかするもんじゃない。るりとトド松が抱き合ってるのを見て、初めて恐怖を感じた。心臓が痛くなって張り裂けそうになって、もうこんな想いしたくねえって。だったら最初から大切なもんなんて作らない方がいい。
そんなこと考えながら今日も部屋に閉じこもってた。そんな週末のある日、ガラッと玄関を開ける音がした。兄弟の誰かか母さんが帰ってきたんだろうと思ってた。トントンと階段を上がる音が聞こえた後の、部屋の麩が開かれて「お邪魔します」の声が聞こえるまでは。明らかに家族のものとは違うその声に、驚いて振り返るとそこには居る筈のないるりがいた。
「な、んで…」
るりは驚く程に凛としていて、真っ直ぐに俺を見ている。そして堂々と、ハッキリと言った。
「今日は、言いたいことがあって来たの」
「……ああ、トド松と付き合ってんだからうちに来てもおかしく、」
「一松が好きだって言いに来たの」
空気が止まったように沈黙が流れて、息をするのを忘れる。一瞬、呼吸がつっかえてるりを見ると変わらず真っ直ぐに俺を見つめていた。え、なに、今なんて言ったのこいつ。
るりはもう一度はっきりと言った。
「一松が、好き」