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「…………」

「……ごめん、」


あと数cmで唇が触れる−−
お互いの吐息さえかかる程の近さになって、ふっと顔を背けた。松野くんが何も言わずに、ただあたしを見つめていることだけは分かる。けどどうしたらいいか分からなくて、何て言えばいいか分からなくて…ごめん、と呟いた。観覧車は気付けばもう頂上を過ぎていた。ゴウンゴウンと観覧車の動く音だけがこの狭い空間に響く。


「…一松兄さん、なんだね。僕じゃ…だめなんだね…」


「…ごめん、なさい」


あたしはただ、謝ることしか出来なくて。松野くんはどこか諦めたような、分かっていたかのようなそんな言い方だった。

今、松野くんにキスをされそうになって分かったことがある。頭に浮かんだのは、一松だった。照れた顔の一松、泣きそうな顔の一松、たまに見せる優しい顔の一松。そして、あの日キスをした時の一松…。あの時嫌じゃなかったのに松野くんの時は無意識に拒んでしまった。これが、答えなんだ。
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