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電車に揺られ連れてこられたのは遊園地だった。平日の為そこまで混んではいない。遊園地に来るのは久しぶりで、ジェットコースターやシアター型のアトラクションや、ショーやパレード、沢山歩き回って沢山楽しんだ。あっという間に夕方になってやっぱり最後は観覧車に乗りたいよねという話になり、観覧車の小さな箱へと乗り込んだ。
「うわあ…!綺麗…」
陽が落ちる前の夕暮れ時、観覧車から見下ろす街はいつもと違くてまるで知らない街みたい。
「百瀬さん」
声をかけられて松野くんを見ると、向かい側に座っていた松野くんがあたしの隣へと移動した。凄く真剣な顔をして。肩を抱かれてゆっくりと松野くんの顔が近付いてくる。その先の行動が分かってもあたしの身体は固まったまま。もう少しで、あと数cmで唇が触れる。
その時、ふと頭によぎったのは一松だった。