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「ね、百瀬さん」

バイト先で松野くんに声をかけられてはっとした。仕事中だというのに、頭の中は一松のこと…昨日の一松のことばかり考えている。昨夜の一松はどこか様子が変だった。服が乱れたまま、一松を抱きしめて一松も暫くはそのまま黙って抱きしめられたままだった。その後、「ごめん」とバツの悪い顔をして帰った。松野くんが告白したってこと聞いて、もしかしてそれで焦ってる…とか?


「…百瀬さん?」

「えっ、あ、ごめん何?」


顔を覗き込むようにして松野くんが再びあたしを呼ぶ。松野くんに明るく「次の休み何してる?」と聞かれて、何も予定がないことを伝えるとにっこりと笑った。

「じゃあ、僕とデートしてくれない?」


「え、」


「僕を男として見て、デートしてほしいんだ。だめ…かな?」


うーんと悩んで俯く。答えもあまり決まっていないのに、あまり期待をさせるようなことはしたくない。けどその気持ちを汲んだ上なのか、「僕と一緒に遊んで、楽しいって思ってもらえればそれでいいんだ」と優しく微笑んだ。


「うん…分かった」


躊躇しながら頷くと、松野くんは嬉しそうにそのデートの日程や待ち合わせ場所を話し始める。頭によぎったのは、一松の顔だった。
松野くんと、一松。決められるかわからないけど、この松野くんとのデートで決めなきゃいけない気がする。
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