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夜、アパートにインターホンが響いてドアを開けると一松が息を乱して立っていた。

「あれ、一松どうし…」

言い終わらないうちに玄関に入ると黙ったままの一松に壁に押し付けられキスをされた。突然のキスに驚いて抵抗するのが遅れたけど、抵抗をしようと力を入れても敵わない。一松との、初めてのキス。凄く熱くて切なくて、心臓が壊れそう。何故だか一松のその口付けは焦りとか不安とかそういう気持ちが流れ込んでくるようだった。どうして、一松は急にこんな行動をするんだろう。いつだって一松の考えてることは分からない。きっと言葉にするのが苦手な人なんだろうけど。

荒々しいキスにされるがままになっていたけど、一松があたしの洋服を捲り上げて残っていた理性が働く。ちょっと待ってと制止しても一松の手は止まらなくて、どんどんと服を乱される。

「待って…っ!無理矢理しないって、言った…」

弱々しく呟くと一松の動きが止まった。どうしてそんな悲しそうな顔するの。どうしてそんな、泣きそうな顔するの?ごめん、ごめんと崩れ落ちるように座り込んだ一松が今にも消えちゃいそうで。思わずしゃがみこんで一松を抱きしめた。これが今日友達が言っていた「同情」なのかは分からないけど、今のあたしにはこうすることが一番な気がした。

何を急いでいたのかは分からないけど薄着で走ってきたんだろう、抱きしめた一松の体はひんやりと冷たかった。
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