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昨日は本当に信じられないくらい、一松は優しくて…デートも嫌じゃなかった。寧ろ楽しいとも思った。意外と猫が好きだったり猫に好かれたりするとか、照れた顔は少し可愛いとか、今まで知らなかった一面も知れたし。バイトに向かう途中、昨日のことを思い出してくすりと笑った。
出勤すると直ぐに松野くんが「おはようございます」と挨拶をしてきた。
「今日、終わったら時間あるかな?」
「えっ、うん、あるけど」
「話があるんだ」
いつもニコニコ笑っている松野くんとは雰囲気が違くて。妙に真剣な表情で、こんな松野くんは初めて見る。話って何だろう。夕方になり、バイトを上がって休憩室へ入ると松野くんが座って待っていた。
「お疲れさま」
「うん、お疲れさま」
松野くんの向かい側のパイプ椅子を引いて座ると、どこか緊張した面持ちで話し始めた。
「あの、ね…」
「うん?」
「あー、だめだ…!もう直球で言うね!」
頭をガシガシと掻くと、よしっと自分に言い聞かせるようにして背筋をぴんと伸ばす。
「僕、好きだったんだ。前から百瀬さんのこと」