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「それ、百瀬さんのマフラーだよね」


家に帰って俺が首に巻いたマフラーを見たトド松はさっきまではしゃいでいたのに、別人のように表情が変わった。


「一松兄さんが好きな女の子って、今日デートしてきた女の子って…百瀬さん…なの?」


声のトーンを落としたトド松からは笑顔が消え少し怖い。俺は玄関に突っ立ったまま、少しの沈黙の後「…うん」と頷いた。トド松は「一松兄さん、何で…ううん、何でもない」と言いかけてやめた。まさか少し前まで俺がるりをレイプしていた関係だとは思ってもいないだろう。
どこで、とかいつの間に、だとかいろいろ聞きたいことがあったように見えたけど、トド松は何も聞いてはこなかった。


「一松兄さん、ごめん」


俯いていた顔を上げるとトド松は真面目な顔で真っ直ぐ俺を見ていた。生まれてからずっと一緒に生きてきて、こんなにもこいつと話すのに緊張するのは初めてだ。トド松は困ったように眉尻を下げて少し笑った。


「僕、百瀬さんを一松兄さんには渡せないや」


初めての恋のライバルが、兄弟とかほんと笑えねえよ。
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