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「おはようございます」


新しく出来たカフェに憧れて、ずっと長い間働いていたコンビニを辞めて働けることになった。一ヶ月が経ち漸く慣れてきたかなという頃に新しく松野くんという男の子が入ってきた。同い年くらいの松野くんは男の子なのにどこか女の子よりも可愛らしい顔をしている。松野くんは美味しいケーキ屋さんだったりお洒落な雑貨屋さんをよく知っていて、あたしより遥かに女子力が高い。


「松野くん、この間教えてくれたドーナツ屋さん行ったよ」


「えっもう行ったの?」


「うん、試食があったんだけどどれも美味しくてついつい買いすぎちゃった」



松野くんはあはは、と笑うと今度は僕と一緒に行こうよと誘ってくれた。今日は松野くんは早番だったから先に上がっていった。遅番だったあたしは先輩たちと閉店準備を済ませると私服へ着替えて店を出る。家への帰り道、松野くんを見かけた。


「あれっ、松野くん」


「………」


松野くんは紫色のパーカーにジャージというリラックスした服装で歩いていた。声をかけると黙ってあたしをじーっと見ている。
心無しか雰囲気が違うような…髪の毛もボサボサだし目付きも悪い。家だとこんな感じなのかな?



「数時間ぶりだね、そうだ!さっきアイス買ったんだけど、公園で一緒に食べない?」


「うん…いいけど」



二人で公園のベンチに座り、袋からコンビニで買ったアイスを取り出す。チョコとバニラ、どっちも食べたくて買ったけど二人で半分こして食べられるし買ってよかった。夏が過ぎた今、夜になると少しは過ごしやすい気温になって夜風が肌に触れて気持ちがいい。



「はい、バニラとチョコがあるよ!ね、半分こしない?」


「うん」


袋からアイスを取り出して棒アイスを頬張る。うん、やっぱり王道はバニラだ。でも甘いチョコも外せないんだよね。隣を見ると松野くんは渡したアイスをまだ開けていなくて、下を向いたまま。


「松野くん、アイス溶けちゃうよ」


目線だけをちらりとこちらに向けると、松野くんはにやりと僅かに口角を上げた。そして、片腕を引っ張られて視界にはいっぱいの松野くん。唇には、松野くんの唇が当たっている。


持っていたアイスは地面に落ちて、砂まみれになった。聴こえるのは、虫の声だけ。
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