「…は?」 こっちは今日ふられて、そんな奴に急に抱き締められてパニックになっているっていうのに。 「ふ、ふざけ…」 ふざけんなって先生の腕を引き剥がした瞬間、心臓がドキッと高鳴った。だって先生の顔はびっくりするくらい真っ赤で、夕陽のせいなんかじゃないって分かるくらいに。先生はよりカッと耳まで赤くするとそわそわと腰に手を当てたり、頭をガシガシと掻いたり、「あー」とか「いや、すまん」とか呟きながら額に手を当てたりしている。 「な、なんだよそれ。からかわないでよ、どうせ女子高生の恋愛なんてって馬鹿にしてるんでしょ」 動揺して皮肉を言ってみるけど先生は何も言わない。きっと何て言えばいいのか分からなくて必死に考えてる。乙女心なんて差し置いて、男ゴコロ?教師ゴコロ?全然わかんないよ。 「…もう、期待したくない」 少しトーンの低い声で呟いた。 「先生は、どうしたいの」 「俺は…自分でも分からないんだ、すまん…けど、お前のこと放っておけないみたいだ」 他人事みたいな言い方の先生は、それに、と言葉を続けた。 「百瀬に「好きでいるのやめる」って言われた瞬間……嫌だと…思ったんだ」 風が吹き抜けて、私の涙を乾かした。 そんなの、分かんなくないじゃん。それって、「恋」ってことなんじゃないの、先生。 |