教師と生徒の間

話し声が聴こえず誰もいないと思ったのだろう、誰かがドアを閉めて行ってしまった。中からは開けられない。携帯は仕事中持ち歩かないし、どうしたものかと頭を悩ませていると後ろから柔らかいものに包まれた。

「…百瀬、何してる」

「何って、抱き着いてるんだけど」

離れるよう注意しようと振り向くと、暗がりのせいで見えず何かに躓き百瀬を巻き込んで倒れてしまった。

「う、おっ…!」

「ひゃっ、」

バランスを崩しドスン、と二人で倒れこむ。此処は転倒したら危ない場所だ、百瀬に怪我はないかと冷や汗が流れた。

「百瀬…っ!大丈夫か!」

「ん、…大丈夫」

幸い怪我はないようで安心し息をつく。大切な生徒だ、怪我なんかさせたくないしこいつは一応足を怪我しているんだから悪化なんてしたら大変だ。

「怪我はないか、足は…」

「足は大丈夫、だけど…」

「痛むところあるのか?」

百瀬は何故か恥ずかしそうに視線を逸らした後、俺の手を取り自分の胸元へと当てた。

「ココが痛い、痛くて苦しい。先生のこと、考えると…」

不覚にも心臓がどくんっと音を立てて鼓動を早くした。そして同時に何とも言えない複雑な感覚になった。俺は、教師なのに。百瀬に、教師と生徒の間には生まれない…生まれてはいけないものを感じてしまった。

俺は教師で、こいつは生徒。
こいつは生徒で、俺は教師。
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