心臓にナイフ

初めて一緒にベッド寝た。セックスした訳でもキスをした訳でもない。ただあの狭い布の中で二人、互いの温もりをそばで感じていた。その次の日「ソファで寝る」と言ったにも関わらず、腕を引かれベッドへと連れて行かれた。

「ちょっと、」
「…やなら、いいけど」

そんな風に言われたら断りにくい。私はこの数日間で思い知ったのだ。自分が流されやすい人間だということを。分かってはいるのに、人間の欠点というものはそう簡単には治らない。まあ、何をする訳でもないし…そんな自分の甘ったるい考えと、心の奥底では少し期待している自分。だけど後者の自分は認めたくないジレンマ。

「風邪、引くし。お互い」
「………」

何も言わず電気を消すと、薄暗く光る豆電球が狭い部屋を優しく灯す。何もない、何もないんだ。そう思いながらひんやりとしたベッドへ寝転んだ。カチ、カチ、と時計の秒針が進む音。何分経ったのだろう。10分?それとも20分か。

「…っ!」

起きていることがバレないように、なるべく呼吸音をそのままにした私は狡い大人だろうか。
触れていなかった手が、彼の手にそっと触れたのだ。相手が起きているのか寝ているのか分からないまま、心臓の鼓動が鼓膜に響く程に煩くなっていく。

ぎゅ、と冷たい手が私の手を握りしめた。

私は、今日も寝不足になるだろう。
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