パステルピンクの発熱

「えっと、電車だと大変だから…」

急に声をかけてきたこの女は、ぶつぶつと独り言を呟きながら俺の腕を自分の肩に回し立ち上がらせた。俺をタクシーに乗せると、何やらどっかの駅のスーパーの近くまで、と行き先を運転手へ伝えた。男が巻くには似合わなすぎる、パステルピンクのマフラーからは女の香水か柔軟剤か、いい香りがする。

「食欲、ある?」
「………いや」

その短い言葉だけで会話は終わり、狭い空間にはタクシーのラジオの音だけが聞こえた。タクシーを降りるとお洒落なアパートの目の前で、105号室のドアをガチャと開けた。

「どうぞ、取り敢えず着替え出すから」

如何にも女の一人暮らしといった感じで、かわいいカーテンやインテリアやぬいぐるみでコーディネートされている。用意されたジャージに着替えると、寝室へ連れていかれた。女が使っているベッドに寝かされ、思わずドキッと心臓が跳ねる。

「体温だけ、」

言われるまま体温計を挟むとピピピピ、と聞こえた。

「38.9!?」

頭が痛いというのに、女のデカい声のせいで頭がキーンとする。身体は怠く悪寒が酷いが、暖かい布団はマフラーと同じでいい香りがして何故か安心した。
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