はじめまして
「あんたを抱きたい」
熱の篭った瞳で真っ直ぐにそんなことを言われて、きゅんとこない女なんかいるのだろうか。どうでもいい男にじゃなくて、好きな人限定だけど。確か、前にも同じこと言われたんだっけ。
部屋につくなり噛み付くようなキスをされ、呼吸もままならない。ぐいっと腕を引かれ大きなベッドに尻もちをつく。私を見下ろす彼の目は、いつの日かと同じ。ギラギラと獲物を捕らえた野獣のようだ。私の上に跨ると、ふーっと深呼吸を繰り返した。
「いちまつ」
「えっ?」
「俺の名前、松野一松」
「いち、まつ…」
彼の名前を初めて知って、初めて呼んだ。ずっとつっかえていたものが消えたような、不思議な感覚。怖かった、だけど本当は知りたかった、あなたの名前。呼びたかった名前。
「るり、百瀬るり」
「るり…」
彼の、一松の低い声が私の名前を呼ぶ。それだけの事なのに胸がきゅっと締め付けられた。何度も何度も、飽きることなくお互いの名前を呼び続けて、甘いキスを繰り返した。
遠回りしたけど、漸く私たちこれからスタートなんだね。
「いちまつ」
「ん?」
「初めまして、だね」
あなたと出会えたこと、出会えたことで知った色んな感情、悲しくて傷ついた事もあった。だけど、こんなにも心が満たされたのは、一松と出会って好きになったから。
「ふっ、まあ確かに」
そう言って笑うと彼は私の首筋に顔を埋めた。