いつぶりのぬくもりか
「は、え?彼氏?高校生…か、大学生じゃないの?」
「あーうるさいうるさい」
「ちょっと、」
困惑する先輩に対し、鬱陶しそうに声を荒らげる彼を咎めた。パーカーにジャージといういつものだらしのない格好、ポケットに手を突っ込んだまま気だるそうな少し丸まった背中。目つきの悪い顔が更に険しくなると先輩を睨んだ。
「悪いけど、他当たってくれる」
ぐっと腕を引かれると彼に抱きしめられた。たった数日間会っていないだけなのに、彼の表情も匂いも久しぶりのように感じる。喉の奥から込み上げてくるものをぐっと飲み込むようにして我慢をした。
「なんだよ、だったら色気使ってんじゃねえよ」
別に色気も色目も使った覚えなんかないし、だから丁寧にお断りをしたというのに。優しく声をかけてくれたのは純粋に有難かったと感じた私の気持ちは何だったのか。何も言い返すつもりのない私の肩を、ぎゅっと抱き締める手に力がこもった。
「へえ、あんたにはそう見えた?勘違いごくろーさん」
「…っ」
よくもまあ年上相手にそんなにメンチを切れるものだ。先輩の顔が極端に歪み、舌打ちをするとこの場から去っていった。