街灯りは哀しく水面にうつる
居酒屋を出て人だかりを避けて通りを抜ける。川沿いを歩きながら、駅へ向かう。腕時計を見ると21時30分を過ぎていた。いつもならもう家に帰っていて、二人でご飯を食べ終わってテレビを見てるか、ゲームをしていた頃だろう。わたしの頭の中は、いつだって彼のことばかりだ。私から逃げたくせに、拒否をしたくせに。
後ろから腕を引かれた。瞬間、彼の顔が思い浮かぶ。
振り向くと、先程まで飲み屋で一緒だった職場の先輩だった。
彼がいるはず、ないのに。
心の奥がずんと沈む感覚。多分明らかに落胆した表情をしてしまったのだろう。
「大丈夫?」
「えっ?」
「なんか最近元気なかったしさ、俺送ってくよ」
「あ…そんな、大丈夫ですよ、お気遣いありがとうございます」
そっと腕を振りほどこうとしたけど、それは叶わなかった。