言葉の意味は、

咄嗟にとはいえ、こんなあからさまに意識してますとバレバレの態度を取ってしまった。小学生かよ、中学生かよ、手が触れただけできっと私は顔を真っ赤にしているだろう。どうしたらいいか分からなくて、ごめん、と謝ってから散らばった野菜を拾おうとした瞬間。その次の瞬間には視界いっぱいに彼が映っていて、そこで初めて、彼がとても辛そうな顔をしていることに気が付いた。
何も言わないまま強引なキス。だけどまるで私をとても欲しているかのような、荒々しくも求められているような口付け。あ、だめ、だめだよ。こんなキスされたら、戻れなくなる。

「…好きだ」

私の耳に聞こえたその言葉が、やたらと頭の中で響く。思わず彼をどんっ、と突き飛ばした。なんて言えばいいか分からない。だけど彼の表情を見たら、心臓がぎゅうって潰されるみたいな感覚になった。眉間に皺を寄せて子供みたいな、泣きそうな表情。

今度は彼が「……ごめん」とだけ言って玄関をばたん、と音を立て出ていった。

時間が経てば戻ってくると思った。だけど彼は日付が越えてもこの部屋に帰っては来なかった。
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テーマ「人外ファンタジー」
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