大人のキスを召し上がれ

ごめん、ってなんだよ。その謝罪の一言よりも、何よりも、手と手が触れ合った瞬間咄嗟に避けたのだ。彼女がさっと手を引っ込めた。その行動が本人の意図するものではなく、反射的にやってしまったかのような…その「無意識」だったことが一番ぐさりと胸に刺さった。心から俺を拒絶しているんだというのが伝わってきたから。
喉の奥がじわっと熱が上がってくるような、子供が泣くのを我慢してるような感覚。でも絶対に泣かない。これ以上彼女に「子供」だと思われたくなかった。俺はもう子供じゃない。俺よりも身長も小さく華奢なその肩をがしっと掴んだ。

「ひゃっ、な…に…っ!」
「………」
「んんっ、ふぅ…っ!」

彼女の意思なんか関係なく、俺だって大人のキスくらい出来るということを示そうと強引に口付けをした。唇の隙間からにゅるりと舌を入れ堪能するかのようにねっとりしたキスを。

「んんっ、」
「…っ、はあ…、好きだ」
「…っ!」

好きだ、という三文字の言葉を伝えた。もう気持ちは止まらなかった。だけどその言葉を聞いた彼女は、俺を思い切り突き飛ばした。体も心も、拒絶された。

大人のキスってなんだ。大人って何だ。結局自分の気持ちばっかり押し付けた俺は、誰よりも子供なんだ。
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