始まりの合図

「…………」
「…さん、百瀬さん、大丈夫?」
「あ、はい?」
「顔色悪いよ、目の下クマ出来てるし」
「あー、最近眠れなくて…」

メイクでは隠せなかった目の下のクマとと、睡眠不足による疲労やエネルギー不足が目に見えて同僚には「不健康」そのものに写ってしまったようだ。

昨日何があったか、何も無い。キスだって、もちろんセックスだってない。ただ、手を繋がれただけ。それだけで眠れなくなるって、どれだけ自分はピュア…いや、いも臭いのだろう。このままでは睡眠不足で倒れるのもそう遠い未来ではない。

幾つかは分からない、けど歳の離れた男の子とひとつ屋根の下どころかひとつの布団で寝ているという異常事態。私だって、女だ。ドキドキしたり、きゅんとしたり、もちろん性欲だって溜まるのだ。

家へ帰ると、部屋の明かりはついていなかった。机の上にメモ書きが置いてあり「ちょっと出かけてくる」と何とも男の子らしい乱雑な字で書いてあった。私はそれを見るとスーツもそのままに、寝室のクローゼットを開けその奥の引き出しから「ある物」を取り出す。ドアを閉め、いそいそとストッキングを脱ぐ。彼が帰ってくる前に。

たまに一人でする時に使っていた、ピンク色した大人の玩具。彼が来てから全くそういうこともしていなかったし、出来なかった。今このむらむらした感情で、丁度彼はいない。今なら、少しだけなら、と。

タイトスカートを捲ると下着の中心は既に湿って色づいていた。そこへ振動している玩具を近づける。

「…んっ、ふうっ…!」

久しぶりの快感に身体が痺れるようだった。イケナイとは思いつつも、頭の中で思い浮かべてしまった人物。そんなの一人しかいない。

夢中になって気付かなかった、玄関の扉の音に。
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