いい人なんかじゃありません


やってしまった…好きな人の兄弟に間違えて告白をしてしまった…。双子でも珍しいのに、彼は何と六つ子でわたしはそのことをすっかり忘れていた。わたしの思考回路は一時停止したままで、ただ嫌な汗がだらだらと流れる。この気まずい空間にどうしようもなく、沈黙した教室の中小さな声で「…ご、ごめんなさい…間違えました…」と呟いた。

しかも一松くんといえば同じクラスではあるけど話したこともないし、わたしの中では怖いイメージがあった。常に眠そうで目付きも悪いし誰ともあまり話さない。見かけで人を判断するなんて良くないとは思うし、チョロ松くんの兄弟だし…いい人なのかもしれないけど。

ごめんなさいと呟いたわたしに、一松くんはにやりと笑った。


「へえ、あんたチョロ松兄さんのこと好きなの」


先ほどいい人なのかもしれないと自分に言い聞かせたけど、この笑顔を見て「あ、やばい弱味を握られる」と嫌な予感しかしなかった。

「え、えっと…はい、それでその…このことは…」
「あー、もちろん言わないよ。あんたがおっぱい触らせてくれるんなら」
「はっ!?」

うわああああ、やっぱりだめな人だこの人…!変態だし危ないよぉ…!

泣きそうになりながら心から思った。
同じ兄弟とは思えない、いやきっと顔が似ているだけで血の繋がりなんてない筈だ。
出来ることなら、時間を巻き戻したい。そして彼に告白する前の私に戻りたい。
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