こんな俺で、いいの


「だって、ほんとに…」

るりが伏し目気味になって長い睫毛が揺れている。

「一松くんのことが…好き、なんだもん…わたし、チョロ松くんが好きだった筈なのに…気付いたら一松くんのことばっかりで、」

少し声を震わせて、再び聴いた「好き」たという言葉。他の誰でもなく、俺が。俺のことが。やっぱり嘘じゃない。絶対に叶わないと思っていたこの恋が、ずっと内側に隠していたこの想いが、るりに届く。そう思ったら堪らなく嬉しくなって、るりの唇に自分の唇を強引に押し当てた。

「ん…っ」

るりは今までみたいに抵抗はしなかった。ただ俺を受け入れるかのようにされるがままだ。微かにるりのシャンプーの香りが鼻につく。るりの匂い。

俺は弱虫だ。自分の気持ちも伝えずに怖がって逃げて、本当は好きで振り向いてもらいたいくせに勝手に嫉妬して、るりを泣かせて傷つけた。

「こんな俺で、いいの」
「…そんな一松くんが、いいんだよ」

真っ直ぐに見つめて応えてくれるるりに、照れくさくて眉間に皺が寄ってしまう。もっと、普通なら「ありがとう、俺も好きだよ」って優しく笑って言えるのかな。

「ほんと変わってるよお前」
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