こんなことが言いたいんじゃない


いてもたってもいられなくてるりの腕を掴んで階段を降りていった。

「えっ、一松くん…っ?どこに、」

後ろからチョロ松兄さんが「一松、あんまり乱暴にするなよー」と声が聞こえたけど振り返らない。うるせーよドルオタ童貞。
何処か二人になれる場所に行きたくて靴も履き変えないまま校舎を出た。体育館の裏へと回ってそこで漸くるりの手首を離した。

「えと、靴…」

呑気なるりに腹が立って、俺だけこんなに振り回されてんのかって悔しい気持ちになる。再びるりの両手首を掴むと体育館の壁へと押し付けた。

「ひゃっ、」
「お前見てると、イライラすんだよ」
「…っ、」

泣きそうな顔をするるりにどきっと心臓が跳ねる。泣きそうな顔も、可愛いから腹が立つ。
違う、こんなことが言いたいんじゃない。こいつを傷付けたいわけじゃないのに。

「ご、ごめんなさい…」
「何なんだよ、お前、馬鹿なの?頭に蛆虫でもわいてるんですか?俺のことが、好き?…今まで何されてきたか分かってんのかよ…」

無意識にぎゅう、とるりの手首を掴む手に力が入ってしまう。るりは唇をこらえるように噛み締めた。
どんだけ余裕無いんだよ俺、って自分でも少し笑える。

こいつの前じゃやっぱり調子狂う。
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