クラスメイトに松野カラ松という男がいる。新しいクラスになって早々、隣の席になり私はうんざりした。そもそもこの学校での「松野」と苗字のつく奴は皆ヤバイ奴だ。みんな同じ顔の六つ子で、上から下までそれぞれクセの強い兄弟なのだ。私は以前長男の松野おそ松の後ろの席になったことがあって、その席の時はもう大変だった。授業中もしょっちゅう前の席の松野おそ松は私に話しかけてくるので集中出来ない上先生には一緒に怒られるし。しかも最上級にデリカシーのない男なので、体育の後の授業中に「なあなぁるりちゃんって今日水色の下着だよね?」と静かな教室で暴露された時は原形がなくなるくらいぶち殺してやろうかと思った。なんでここで言う?なんでみんなの前で??そもそもなんでお前が私の今日の下着の色知ってんだよ!!!!ていうかるりちゃんとか気持ち悪い!!
…とまあ話は長くなったが、とにかく長男のトラウマのせいで私は松野と苗字のつく六つ子が大嫌いになった。なのにやっと開放されたと思った新クラスでは再び「松野」が私の近くになってしまったのだ。
次男はウルトラスーパーナルシストで、しょっちゅう手持ちの鏡に笑いかけている。長男と違ってやたらと馴れ馴れしくないししつこくないし授業中も静かなのでずっとマシだけれど。しかし何故か鏡を見つめている松野カラ松はチラッと此方を見つめては笑いかけてくる。気持ち悪い。

「ねえねえ実はさ、わたし松野カラ松のこと好きなんだよね」

冗談だった。冗談でしかなかった。ただちょっとからかってやろうと思っただけ。ナルシスト野郎をドキッとさせて、んなわけないじゃんばーかっ!って笑い話になる、と思っていた。それなのに目の前のコイツときたら顔を真っ赤にさせて硬直している。およよよよ?私の予想ではいつもみたくキザに「ふっ、やはりな…」とか「また一人カラ松ガールズが増えちまった」とかそんなクソみたいな台詞を吐くんだと思っていたのだが。そしてそれを爆笑するというオチだったはずなのだが。

「じっ、実は俺も…好きだったんだ」

おかしい、いやいや、おかしい、ていうか有り得ない。何で、嘘だよね?あんなに気持ち悪いと思っていた松野カラ松に。不覚にもときめくなんて。これが、これがギャップ萌えというやつなのか!認めたくない、認めない。ていうか「俺も好きだったんだ」ってことはコイツ私のことそういう目で見ていたのか知らなかった…。
松野カラ松はへにゃ、と赤くなったまま笑うと恥ずかしそうに頭を掻いた。うわー、もうやめてくれ。そんな風に笑わないで!もうこれ以上お前のこと可愛いとか思いたくもないし胸きゅんとかもしたくない!

こんなの、こんなの恋なんかじゃない!

…と思う。
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