「つまんない、つまんないよ」


久遠は小さな口を開き、ぼそぼそと呟いた。


「不動くん、つまんない」


はっきりと俺の耳に突き刺さる一言に、思わず露骨な態度をとってしまった。
眉間に皺を思い切り寄せて、舌打ちもしてしまった、気がする。 自慢ではないが、久遠と"こういう関係"になってから、俺は舌打ちをした事がなかったのだ。


しかし今のは、そう、今のは確実に俺のせいではない。


つまらないと言われた。 俺といても楽しくないと、そういう意味か。


「楽しくねーなら帰れば」


暴言のように刺々しい口調だと自分でもわかった。
しかし、あまりにもショックすぎたのだ。(認めたくはないが)



「帰らない。…だけど、つまらないの、」


「じゃあお前は何がしたいわけ? してー事があるならはっきり言えよ。さっきからつまんないつまんないって」


先程よりもぐったりとソファに寄り掛かっている久遠を睨んだ。
久遠は目をキョロキョロと泳がせるばかりで何も言おうとはしない。

正直、もう飽きた。
このやりとりに。


「おい、いい加減にし「不動くん、が、」


「あ?」


「不動くんが、何にもしないから。だからつまらないの。 不動くんが、私に何もしてくれないから」


それってつまり、


「…お前結構大胆だな」


「だって」


「はいはい、優しくしますから、っと」



それから部屋の明かりが消えるのに、時間はかからなかった。

お前に触れるのが怖かっただなんて、口が裂けても言えねーわ。




「あきお、くん」












意気地無しに告ぐ




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