※捏造兄妹設定
玄関の戸を開けると、トタトタとスリッパを鳴らしながら冬花が出てきた。
「お兄ちゃん、おかえり」
「おー、」
俺と冬花は血が繋がっていない兄妹だ。あと、無愛想な父親が1人。 父親は朝早くに家を出て行き、夜遅くに帰ってくる。休日でも家にはほとんどいないから、今だに父親が何をしているのか俺も冬花も詳しくはわからない。
ただそれだけの話。
夕飯はいつも冬花が作ってくれている。 冬花の作る料理はうまい。最近玉子料理にハマっているらしく、今日の夕飯は形の良いオムライスだった。
「実はね、このオムライス、包むの少し失敗しちゃって」
「どこが」
失敗したというオムライスに目をやるが、俺にはどこをどういう風に失敗したのかわからない。
しかし冬花は、酷く残念そうにスプーンを置いた。 そんなに落ち込む事なのか。 俺には綺麗に見えるし、別に味も変わるわけじゃねーのに。
「お兄ちゃんに、褒めてもらいたかったの。うまくできたなって」
「…褒めるも何も…、まじでうめーから。お前が落ち込む事じゃねえだろ。ほら、冷める前に早く食っちゃえよ」
そう言うと冬花はまた右手を動かし始めた。
特にこれといった会話はないので、カチャカチャと食器を叩く音しかしない夕飯だがこれがいつも通りの風景なのだ。
父親の分のオムライスは、さっき冬花がサランラップをかけてコンロの傍に置いていた。
帰ってきたら適当に食うだろう。
「お兄ちゃん、先にお風呂かりるね」
「おー。あ、冬花。これ洗濯機の中入れといて」
「…泥だらけ。汚ない」
「部活やってるんだからしょうがねーだろ。 早く入ってこい」
そう、こんな日常なんだ。
兄と妹っていうさ。
知らないことの方が
多かっただけ