特に何をするわけでもなく、ぼんやりとソファに体を預ける。 そんな毎日だ。
興味のある事なんて何一つないし、何かをしようという意欲もない。
ここ数日はただひたすらと壁の一点だけを見つめていた。
小さい頃は、天井の木の木目が顔に見えて怖かったな。
もう顔にすら見えない天井を仰ぎ、そっと手を伸ばしたが、届くはずのない右手は再び俺の元へと戻ってきた。
そうそう、玲名はね、掛け時計の秒針がカチカチいうのが怖くて泣いていたんだよ。
あの頃は可愛かったのにね。
最近気付いたんだ。眼を瞑って昔の事を考えているとあっという間に日が暮れてしまうという事。
メールを受信して携帯が光った。
玲名が今から来るってさ。
こんなんじゃ確実に怒られるよね。
「ヒロト」
「…早いね、玲名」
玲名は俺の顔を見て、何かを言いたそうにしていたけど、眉間に少しの皺を寄せただけだった。
多分大分前から家の前にいたんだろう。きっとメールを俺に送るのに相当悩んだんじゃないかな。玲名は恥ずかしがり屋だから。
真っ赤になった手には、スーパーの袋が握られていたからきっと夕飯を作ってくれるんだね。
「こっちは年末で忙しいというのに、お前は随分と暇そうだな」
「やる事がないからね」
玲名の言葉で気が付いた。今日が大晦日だという事に。
忙しいといいながらも俺にわざわざ会いにきてくれる玲名が可愛くて、思わず手を伸ばしてしまった。伸びてしまった手はもう戻らない。
「触るな不健康」
「夕飯、何?」
「…シチュー」
「ねぇ玲名。明日、初詣行こうか」
今年もおひさま園の皆がしあわせでありますように、って。
静寂の中で玲名は俯いたまま、俺の身体に腕を回してくれた。
耳に入るのは、お互いの息をする音だけ。
しんしんと